教養民法基礎コース

意思表示③

Question【ケース1-3①】

(1)AはBに騙されて安い価格で自己所有の土地をBに売却してしまった。騙されたことに気付いたAは、Bからこの土地を取り戻すことができるか?
意思表示3-1(1)
(2)AはCに騙されて安い価格で自己所有の土地をBに売却してしまった。騙されたことに気付いたAは、Bからこの土地を取り戻すことができるか?
意思表示3-1(2)
(3)AはBに騙されて安い価格で自己所有の土地をBに売却してしまった。その後、Bはこの土地をCに転売した。Aは、この土地をCから取り戻すことができるか?
意思表示3-1(3)

詐欺された者は取消しができる

騙されて意思表示をした者は、取消しをすることができます(96条1項)。

第96条1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる

では、詐欺をした者と取引の相手方が異なる場合(第三者の詐欺の場合)や転売によって第三者が登場した場合はどうなるのでしょうか?

第三者の詐欺の場合

AがCに騙された結果、Bに対して売る意思表示をしてしまった場合(第三者の詐欺のケース)では、相手方Bの取引の安全にも配慮する必要があります。

そこで、取引の相手方が悪意の場合のみ、詐欺された者は取消しをすることができます(96条2項)。

第96条2項
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる

つまり、Bが「AはCに騙されて安い価格で売却しようとしているんだな」と知っていた場合(=悪意)、Aは、Bに対する意思表示を取り消して、土地を取り戻すことができることになります。

逆に、善意の場合には、意思表示の取消しはできず、土地を取り戻すことはできないことになります。

善意の第三者が登場した場合

では、〔ケース〕(3)のように、詐欺による意思表示によって売却されたものが第三者に転売されてしまった場合は、どうなるのでしょうか?

騙されたAは、第三者Cが詐欺の事実を知らない(=善意)の場合、取消しを対抗(主張)することができません

第96条3項
前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない

その結果、土地はCの所有となり、Aはもはや土地を取り戻すことはできないことになります。

一方、詐欺の事実について知りながら譲渡を受けた悪意の第三者を保護する必要はありませんよね。そこで、騙されたAは、第三者Cが悪意の場合、取消しを対抗(主張)することができます

ただ、このルールが適用されるのは、「取消前の第三者」の場合です。取消しがされた後でB→Cの転売がされた場合(取消後の第三者の場合)は、177条の対抗関係で処理していきます。

【図解1-3①】「詐欺」のまとめ

<相手方が詐欺をしたケース>

「虚偽表示」のまとめ<相手方が詐欺をしたケース>

<第三者が詐欺をしたケースの整理>

「虚偽表示」のまとめ<第三者が詐欺をしたケースの整理>

<第三者が登場するケースの整理>

「虚偽表示」のまとめ<第三者が登場するケースの整理>

Answer【ケース1-3①】

(1)Aは詐欺を理由として売買契約を取り消して、土地を取り戻すことができる。
(2)AがCに騙されて安く売却してしまったということを相手方Bが知っている(悪意の)場合に限り、Aは売買契約を取り消して、Bから土地を取り戻すことができる。
(3)Aは、Cが詐欺の事実について知らない(悪意の)場合、善意のCに対して取消しを対抗できない。したがって、Aは、Cが善意の場合、土地を取り戻すことはできない。

Question【ケース1-3②】

(1)AはBに強迫されて安い価格で自己所有の土地をBに売却してしまった。強迫状態を脱したAは、Bからこの土地を取り戻すことができるか?
意思表示3-2(1)
(2)AはCに強迫されて安い価格で自己所有の土地をBに売却してしまった。強迫状態を脱したAは、Bからこの土地を取り戻すことができるか?
意思表示3-2(2)
(3)AはBに強迫されて安い価格で自己所有の土地をBに売却してしまった。その後、Bはこの土地をCに転売した。強迫状態を脱したAは、この土地をCから取り戻すことができるか?
意思表示3-2(3)

強迫された者は取消しができる

強迫されて意思表示をした者は、詐欺をされた者同様、取消しをすることができます(96条1項)。

第96条1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる

では、強迫した者と取引の相手方が異なる場合(第三者の強迫の場合)や転売によって第三者が登場した場合はどうなるのでしょうか?

実は、詐欺と異なり、第三者の強迫の場合や転売によって第三者が登場した場合であっても、相手方や第三者の善意・悪意に関わらず、強迫された者は取消しがが可能となっています。

詐欺をされた者より、強迫された者の方が保護しなければならない必要性が高いと民法は考えているのですね。

この点については、はっきりと条文に書いているわけではありません。しかし、96条1項で詐欺・強迫ともに取消しができる、と規定した後で、2項・3項で詐欺の場合のみ取消しに制約を加えていることから、強迫の場合は取消しが常に可能であると解釈されています。

第三者の強迫の場合

AがCに強迫された結果、Bに対して売る意思表示をしてしまった場合(第三者の強迫のケース)では、相手方Bの善意・悪意にかかわらず、Aは取消しが可能です。

善意の第三者が登場した場合

では、〔ケース〕(3)のように、強迫による意思表示によって売却されたものが第三者に転売されてしまった場合は、どうなるのでしょうか?

強迫されたAは、第三者Cの善意・悪意にかかわらず、取消しを対抗することができます

ただ、このルールが適用されるのは、「取消前の第三者」の場合です。取消しがされた後でB→Cの転売がされた場合(取消後の第三者の場合)は、177条の対抗関係で処理していきますので注意しましょう。

【図解1-3②】「強迫」のまとめ

<相手方が強迫をしたケース>

「強迫」のまとめ<相手方が強迫をしたケース>

<第三者が強迫をしたケースの整理>

「強迫」のまとめ<第三者が強迫をしたケースの整理>

<第三者が登場するケースの整理>

「強迫」のまとめ<第三者が登場するケースの整理>

Answer【ケース1-3②】

(1)Aは強迫を理由として売買契約を取り消して、土地を取り戻すことができる。
(2)AがCに強迫されて安く売却してしまったということを相手方Bが知っているか否か(善意・悪意)にかかわらず、Aは売買契約を取り消して、Bから土地を取り戻すことができる。
(3)Aは、Cが強迫の事実について知っているか否か(善意・悪意)にかかわらず、Cに対して取消しを対抗できる。

【板書ノート1-3】

(詐欺)
原則-取消し可能
例外-第三者による詐欺の場合
   ⇒相手方が悪意の場合のみ取消し可能
  -善意の第三者が登場した場合
   ⇒取消しを対抗できない
(強迫)
取消し可能
 第三者による詐欺でも取消し可能
 善意の第三者に対しても取消しを対抗できる。
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