教養民法基礎コース

3つの能力概念と無効・取消し

Question【ケース0-6(1)】

(1)高齢のAさんはペットの猫(ミイちゃん)をかわいがっていました。 身寄りがいなかったAさんは、自分が亡くなった場合、猫のミイちゃんに自分の財産を受け継がせたいと思いました。 Aさんはミイちゃんに自分の遺産を受け継がせることが可能でしょうか?
3つの能力概念と無効・取消し ケース1

民法の世界の登場人物になるためには権利能力が必要

権利能力とは、権利・義務の主体となる資格をいいます。これがないと権利を取得したり、義務を負ったりすることができません。ということは契約の当事者にはなれませんし、物の所有者になることもできませんね(もちろんその名義で銀行口座を開くこともできません)。

つまり、権利能力がなければ民法の世界の登場人物となることができないということです。では、権利能力を有しているのは誰でしょうか?

権利能力を有しているのは、自然人法人です。

自然人とは普通の人間のことです。

法人は団体の中で法によって法律上の人格を認められている株式会社や財団法人などのことを指します。

自然人の場合、出生から死亡まで当然に権利能力を有するものとされています。権利能力を制限することはできません。

民法の試験問題では権利能力はほとんど問題になりません(試験の世界で権利能力が問題となるのは“胎児”の場合だけといってもいい位です)。

実務的には、例えばケース(1)のように、ペットに遺産を相続させることが可能かということが一応問題になるでしょう。動物は一切権利能力が認められていないので、ペットに遺産を相続させることはできません。

Answer【ケース0-6(1)】

(1)動物であるネコには権利能力が認められていません。したがって、Aさんは、ネコの“みいちゃん”に自分の遺産を受け継がせることはできないことになります。

Question【ケース0-6(2)】

(2)泥酔状態のAさんが飲み会の席でBさんから土地の購入を勧められて、売買契約書にサインをしてしまいました。 次の日、Bさんから代金の支払いを求められたAさんは、代金を支払う必要があるのでしょうか?
3つの能力概念と無効・取消し ケース2

意思能力がないと無効となる

意思能力とは、行為の結果を弁識するに足りるだけの精神能力のことをいいます。

意思能力が欠ける者のことを意思無能力者といいます。幼児や泥酔者、重度の精神病の人などが意思無能力者の例になります。

意思無能力者の行った行為は無効として処理されます。

たとえば、4、5歳の幼児に面白そうな玩具を見せて「100万だけど買うか?」と聞けば、「買う!買う!」という可能性は十分あります。これで「申込みと承諾の合致により契約成立⇒幼児は100万円を支払う義務を負う」とするのも無茶な話です。幼児には100万という金額がどのくらいの重みをもつものか分からないわけですから。したがって、このような場合、契約を有効として効力を生じさせわけにはいかないのです。

Answer【ケース0-6(2)】

(2)泥酔状態で契約を締結したAさんは意思無能力者でした。したがって、この売買契約は無効となりますので、Aさんは売買代金を支払う義務を負いません。

Question【ケース0-6(3)】

(3)未成年のAさんは親権者Cの同意を得ずに、Bさんとの間で自分が所有している自転車を売る契約を締結しました。 これを知った親権者Cは、自転車をBさんから取り戻すことができるでしょうか?
3つの能力概念と無効・取消し ケース3

行為能力がないと取消しが可能

行為能力とは、法律上、単独で有効な法律行為を行うことができるとされる資格をいいます。

行為能力がない者は制限行為能力者とよばれており、民法の規定で4種類が類型化されています。その4種類とは、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人です。

制限行為能力者が行為能力を制限された行為を単独で行った場合、取消しの対象となります。

Answer【ケース0-6(3)】

(3)未成年者であるAは制限行為能力であり、自転車を売買することに関して行為能力がありません。したがって、親権者Cはこの契約を取り消すことができます。そして、取消しをした結果、自転車は取り戻すことができます。

【板書ノート0-6①】


権利能力 意思能力 行為能力
定義 私法上の権利義務の主体となる資格 行為の結果を弁識するに足りるだけの精神能力 単独で有効な法律行為を行うことができる能力
欠ける者 自然人・法人以外の者 7歳前後の子どもの精神能力が欠ける者 未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人
欠ける場合 権利義務の帰属主体になれない 無効 取り消すことができる

「無効」と「取消し」ってどう違うの?

ケース(2)では意思無能力者が行った行為ということで無効。

ケース(3)では制限行為能力者の行った行為ということで取消しの対象となりました。

では、「無効」と「取消し」というのは何が違うのでしょうか?

いずれも契約等の効力が生じないことになるという点では共通です。

しかし、そこに至る考え方が少し異なります。

「無効」とは、外形的には法律行為が存在していても、法律効果が当初から全く生じないものとして取り扱う法的処理の方法をいいます。

ケース(2)で登場した泥酔者のケースでは、たとえ契約書にサインをしていて、契約が形の上ではきちんと成立しているかにみえても、当初から何も効果は生じていない。“ない”のと同じということです。その契約が存在するかに見えたものは蜃気楼みたいなものということになるでしょう。

一方、「取消し」とは、いったん有効に成立した法律行為の効力を、後から法律行為時にさかのぼって消滅させる法的処理の方法をいいます。

ケース(3)で登場した未成年者のケースでは、未成年者と相手方との契約は、「取り消します!」という意思表示がされるまではちゃんと存在しているということですね。ただ「取り消します!」という意思表示がされると、それは契約の当初にさかのぼって“なかった”と考えていくということになります。

イメージ的には以下の図のように表すことができます。

【図解0-6】無効と取消し

無効と取消し

取消しの対象となる法律行為であっても、取消権を有する側にとって有利だから取消したくないと思った場合はどうすればいいのでしょうか?

取消権をもっている側が何もしなければ有効なままです。

しかし、あえて有効なものとして確定することもできます。それが「追認」です。

「追認」とは、事後承諾のようなものと考えていいでしょう。追認した後はもはや取り消すことはできなくなります。

【板書ノート0-6②】

「無効」-外形的には法律行為が存在していても、法律効果が当初から全く生じないものとして取り扱う法的処理の方法
「取消し」-いったん有効に成立した法律行為の効力を、後から法律行為時にさかのぼって消滅させる法的処理の方法

※取消しの対象となる行為については、追認を行い有効に確定することも可能。

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