教養民法基礎コース

善意VS悪意

Question【ケース0-5】

(1)AさんがBさんから時計を買おうとしています。 しかし、それはBが以前の所有者であるCさんを騙して手に入れた物でした。 そのことをAさんが知っていた場合、Aさんはこの時計を手に入れることができるでしょうか?
善意VS悪意 ケース1
(2)AさんがBさんから時計を買おうとしています。 しかし、それはBがCさんから盗んだものでした。 Aさんはこの時計が盗まれたものであることを全く知らなかったし、注意をしても気付くことが難しかった場合、Aさんは、この時計を手に入れることができるでしょうか?
善意VS悪意 ケース2

善意と悪意は認識の有無を表す言葉

日常用語では、善意や悪意という言葉は倫理的な意味で用いることが多いですね。

善意なら善良な心や好意など、悪意なら憎んでいるとか害を加えようとする気持ちのような意味合いで使われますね。

しかし、法律の世界では、そういう倫理的な意味合いはありません。

知っている、知らなかったという認識の有無を表す言葉として使われます。

つまり、
「善意」は、その事例において問題になっている事実を知らないこと
「悪意」は、その事例において問題になっている事実を知っていること
を指します。

善意とは「知らないこと」、悪意とは「知っていること」
倫理的な意味は含まれていないことに注意!
(ただ、知っているのにもかかわらずその法律関係に参加してきた奴は悪い奴じゃないか?というのはあるかもしれませんね)

民法に善意・悪意がたびたび登場する理由

善意や悪意は民法の条文にたびたび登場する重要概念ですが、どうしてたびたび登場するのでしょうか?

それは、民法が取引の安全を図るためのルールを規定しているからです。

民法では、第三者(または相手方)を保護するか否かを判断する基準として、第三者(または相手方)がその事実を知らなかったのか、知っていたのか(つまり善意か悪意か)によって判別することが多いのです。

例えば、【ケース0-5】の①のようなケースを例に考えてみましょう。

【図解0-5①】善意と悪意

【図解0-5①】善意と悪意

前の所有者であるCをBが騙して手に入れた時計だとAが知っていた(=悪意)場合、悪意のAを保護する必要はないのではないか?

一方、Aが知らなかった(=善意)場合、善意のAは保護する必要があるのではないか?と考えるわけです。

その結果、民法では96条3項という条文に、詐欺による取消しの場合に善意の第三者を保護される規定が置かれているのです。

第96条3項(詐欺取消しと第三者)
前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない

この96条3項により、善意の第三者は保護されます。

つまり、Aが善意の場合、Cは詐欺を理由とした取消しをAに主張(対抗)することはできないので、結局、Aは、この時計を手に入れることができることになります。

善意というだけで保護していいのか?というケースもあり

知らなかった(善意)というだけで保護してしまうのは不当と思われる場合もあります。

それだと不注意な者ほど保護されるということになり、取引の時はなるべくボケ~としておくが勝ちってことになってしまいますからね!

そこで、場合によっては、「過失」の有無も保護されるかどうかの判断の際に考慮していきます。

この場合の「過失」とは、知らないこと(善意)に落ち度があったか、注意すれば分かったのに不注意で気付かなかったのか、ということを表す言葉です。

知らないことに落ち度がなかった、注意しても気付かなかった場合を「善意かつ無過失」といい、その場合だけ第三者(または相手方)が保護される場合もあります。逆に、「善意かつ無過失」ではない場合をまとめて「悪意または有過失」と表現します。

例えば、【ケース0-5】の②のようなケースを例に考えてみましょう。

【図解0-5②】善意と過失

【図解0-5②】善意と過失

その時計がBが盗んだ物(盗品)だとAが知っていた(=悪意)場合、悪意のAを保護する必要はないのではないか?

さらに、所有者Cの保護も考えると単に知らなかった(善意)というだけでAを保護するわけにはいかずAが注意しても盗品とは気付かなかった場合(=無過失)のみAを保護すべきではないか?ということになるのです。

このケースについて、民法では、192条で無権利者から物を買った者を保護する条文をおいています。

第192条 (即時取得・善意取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

この192条により、善意かつ無過失の買主は保護されます。

この仕組みのことを即時取得とよびます

つまり、Aが善意かつ無過失の場合、Aは時計を手に入れることができるのです。

Answer【ケース0-5】

(1)Aは、善意なので時計を手に入れることができます。
(2)Aは、善意かつ無過失なので時計を手に入れることができます。

【板書ノート0-5】

「善意」-ある事実を知らないこと
「悪意」-ある事実を知っていること

「善意かつ無過失」-ある事実を知らず、注意をしても分からなかったこと
「悪意または有過失」-ある事実を知っていること、または、知らなかったが注意をすれば分かったこと
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