教養民法基礎コース

代理②

Question【ケース1-7①】

BはAの代理人でないにもかかわらず、Aの代理人としてA所有の土地を売却する契約をCとの間で締結した。この場合、相手方CはAやBに対してどのようなことを主張することができるか?
代理1-7①

代理権がない者が代理行為を行ったらどうなるか?

代理権を有しない者(自称代理人)のことを「無権代理人」といいます。さらに、この無権代理人が行った行為は「無権代理行為」と呼ばれています。

無権代理人が行った無権代理行為は、本人には効果が帰属しないのが原則です。

民法では、無権代理行為が行われた場合の事後処理的ルールについていくつかの規定を置いています。

本人は無権代理行為を追認することもできる

第113条1項
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない
第116条本文
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる

本人は事後的に自分への効果帰属を認めることができます。これが「追認」です。

本人による追認がされると、契約の時にさかのぼって本人に効果が帰属し、代理行為は有効なものとして確定します。

追認は、相手方・無権代理人のどちらにしてもOK!

無権代理人が無権代理行為を行う理由は様々なものが考えられますが、多くは本人の持っている財産等を勝手に売却してその代金を自分の物にしてしまおうという意図であることが多いです。ということは、代金は代理人が受け取ってしまっている可能性が高く、無権代理行為を追認すると本人は代金を受け取れないにもかかわらず、売買の目的物(土地等)は渡さなければならないことになります。これは本人にとって損をするだけです。それでも追認が行われることは結構あります。その理由は、無権代理人と本人の間に親子、夫婦等の関係があることが多いからです。

一方、本人は追認をしないと意思表示すること(=追認拒絶)をすることもできます。本人が追認拒絶をすると代理行為は本人に効果が帰属しないことが確定します。

相手方の催告権・取消権

無権代理行為の相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。

不安定な状態に置かれている無権代理の相手方が自ら積極的に動いて無権代理の効果を確定することができるようにしているのです。

この催告に対して、その期間内に本人が確答をしない場合は、追認を拒絶したものとみなされます。

催告権は、相手方が無権代理であることにつき善意か悪意かを問わず、行使することができます。

また、相手方は、本人が追認しない間は、取消権を行使することもできます。この取消権の行使は、契約の時に代理権がないことを知らない善意の相手方だけに認められています。

無権代理人はどんな責任を負うか?

無権代理行為において、最も悪いのは代理権もないのに代理人であるかのうように行動している無権代理人ですよね。そこで、民法117条1項は、相手方が無権代理人に対して責任を追及できる規定を置いています。

第117条1項
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う

無権代理人は、相手方の選択に従い、①履行の責任、又は②損害賠償の責任を負います。つまり、相手方は、無権代理人に対して、①無権代理行為によって締結された契約等を無権代理人が履行するように請求することや②無権代理行為によって生じた損害の賠償請求をすることが可能ということです。

しかし、無権代理人の責任追及は、相手方が悪意・有過失であった場合無権代理人が制限行為能力者であった場合には、できないとされています。

<相手方の採りうる手段>
相手方 ①催告権 ②取消権 ③無権代理人の責任追及
善意かつ無過失
善意だが有過失 ×
悪意 × ×

善意かつ無過失の相手方 ⇒ ①②③の手段全部を選択可能。

善意だが有過失の相手方 ⇒ ①②の手段は選択可能だが、③の手段は不可。

悪意の相手方 ⇒ ①の手段しか採れない。

【図解1-7①】相手方の採りうる手段

相手方の採りうる手段

Answer【ケース1-7①】

相手方Cは、無権代理であることについて善意か悪意かを問わず、本人Aに催告することができます。確答がなかったときは追認を拒絶したものとみなされます。

相手方Cが善意の場合、本人Aが追認をするまでは、Cは取消権を行使してこの法律関係から離脱することができます。

相手方Cが無権代理であることについて善意・無過失であり、かつ、無権代理人Bが制限行能力者でない場合、Cは、Bに対して契約の履行請求または損害賠償の請求をすることができることになります。

【板書ノート1-7①】

【無権代理行為の効果】
無権代理行為は、本人が追認しない限り、本人には効果が帰属しない
【無権代理行為の相手が採り得る手段】
①催告権
②取消権(善意の場合)
③無権代理人に対する責任追及(善意かつ無過失の場合)

Question【ケース1-7②】

AはBに対して所有する土地の賃貸借についての代理権を与えていた。しかし、Bは、Aの代理人としてA所有の土地を売却する契約をCとの間で締結してしまった。この場合、相手方CはAに対して土地を引き渡すように主張することができるか?
代理1-7②

表見代理とは何か?

本人と代理人との間に一定の事情が存在し、相手方からみて代理人と信じてもやむを得ないと思われる場合、無権代理であるにもかかわらず、相手方保護のために、本人に無権代理行為の効果を帰属させる制度として表見代理があります。

表見代理が成立すると、その代理行為として行われた行為の効果は本人に帰属することになります。

表見代理はあくまでも無権代理の一種です

表見代理には、①代理権授与表示による表見代理(109条)、②権限外の行為の表見代理(110条)、③代理権消滅後の表見代理(112条)の3類型があります。

代理権授与表示による表見代理(109条)

本人が(本当は代理権を与えていないにもかかわらず)他人に代理権を与えた旨を表示していた場合に成立する表見代理です。

要件は、①本人が他人に代理権を与えた旨を表示すること②相手方の善意かつ無過失です。

具体例 AがBに委任状を与えていたが、実際には何らの代理権も与えていなかった。その委任状を使って、Bが、Aの代理人として、Aの土地の売買契約をCと結んだケース

【図解1-7②】代理権授与表示による表見代理

代理権授与表示による表見代理

権限外の行為による表見代理(110条)

法律行為についての代理権を与えられている代理人が権限外の行為を行ってしまった場合に成立する表見代理です。

要件は、①何らかの法律行為についての代理権(基本代理権)を有する者がその権限外のことを行ったこと②代理権があると信じることについて相手方に正当な理由(善意かつ無過失)があることです。

具体例 Aが、Bに土地の賃貸借契約の代理権を与えていたが、Bは、Aの代理人としてその土地の売買契約をCと結んでしまったケース

【図解1-7③】権限外の行為による表見代理

権限外の行為による表見代理

代理権消滅後の表見代理(112条)

代理人だった者が代理権消滅後になお代理人として行動した場合に成立する表見代理です。

要件は、①かつて代理人であった者が代理人として行為をしたこと②相手方が善意かつ無過失であることです。

具体例 Aは、以前Bを土地の売買の代理人に選任していたが、信頼できなくなったためBを代理人から解任していた。その後、BがAの代理人として、Aの土地の売買契約をCと結んだケース

【図解1-7④】代理権消滅後の表見代理

代理権消滅後の表見代理

Answer【ケース1-7②】

Bは売却の代理権は与えられていませんので、Cとの売買契約の締結は無権代理行為になります。しかし、賃貸借の代理権をAから与えられていましたので、民法110条の「権限外の行為の表見代理」の成立の可能性があります。

Bに売却の代理権がないことについて相手方Cが善意かつ無過失の場合、表見代理が成立し、本人が責任を負うことになります。したがって、その場合、相手方CはAに対して土地を引き渡すように主張することができます。

【板書ノート1-7②】

【表見代理とは】
  • 本人と代理人との間に一定の事情が存在する場合に、無権代理であるにもかかわらず、相手方保護のために、本人に無権代理行為の効果を帰属させる制度
【表見代理の類型】
  1. 代理権授与表示による表見代理(109条)
  2. 権限外の行為の表見代理(110条)
  3. 代理権消滅後の表見代理(112条)
    共通の要件⇒相手方の善意かつ無過失
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