教養民法基礎コース

代理①

Question【ケース1-6①】

Aは自分が所有する甲土地をなるべく良い条件で売却したいと希望しているが、自分で買い手を見つけて契約を行う時間的余裕がなく、また、経験や専門性もないことから、Bに売買契約を締結するところまで自分に代わってやってもらいたいと思っている。AがBを代理人に立てて、Bが行った行為の効果が自分に帰属するようにするためには、どのような要件を満たす必要があるか?
代理1-6①

代理とは何のための制度か?

もし契約等の法律行為を全て本人が自ら行わなければならないとすると困りますよね。

例えば、自分の所有する土地を売りたいと思った場合、良い条件で売却するためには労力がかかりますし、不動産取引の専門家でもなく経験もないという場合、たとえ労力をかけられたとしても希望の条件で売却できるか分かりません。

ということになれば、自分に代わってうまく土地を売却してくれる人に頼みたいと思うでしょう。

また、制限行為能力者は、自分では契約をするだけの能力がない、もしくは乏しいと考えられている人たちです。誰かが代わって契約を締結してあげた方が損をせずに契約を締結することができる可能性が高いです。

このようなケースでは代理人によって法律行為を行う必要性が高くなります。

つまり、代理制度は、前者においては「私的自治の拡充」、後者においては「私的自治の補充」のために設けられた制度ということになります。

有効な代理となるための要件は?

有効な代理行為として、代理人が行った行為が本人に効果が帰属するためには、代理の成立要件をきちんと満たしている必要があります。

代理の成立要件は3つあります。

<代理の成立要件>

①代理人に代理権があること(代理権の存在)
顕名(けんめい)があること(顕名(けんめい)
③有効な代理行為がなされたこと(有効な代理行為)

【図解1-6①】代理の要件

代理ではAを「本人」、Bを「代理人」、Cを「相手方」とよんでいきます。

法定代理と任意代理

代理権の発生原因には、法定代理任意代理があります。

法定代理とは、法律や裁判所によって代理権を与えられる場合であり、未成年者における親権者の代理権(818条)などです。

一方、任意代理とは、本人の代理権授与行為(授権行為)によって代理権を与えられる場合です。

代理権の消滅原因

任意代理の場合、当事者の意思によって代理権は消滅しますが、以下のような場合には民法の規定によって当然に代理権が消滅します。

<代理権の消滅原因>
法定代理 任意代理
本人 死亡 死亡
破産手続開始の決定
代理人 死亡
破産手続開始の決定
後見開始の審判
死亡
破産手続開始の決定
後見開始の審判

Answer【ケース1-6①】

有効な代理として、Bが行った行為の効果がAに帰属するためには、
①AからBに甲土地の売却の代理権が与えられていること(代理権の存在)
②BがCと契約を締結する際に「A代理人B」と名乗って契約を締結すること(顕名)
③BC間の契約締結に意思表示の瑕疵など問題がないこと(有効な代理行為)
がきちんと満たされている必要があります。

【板書ノート1-6①】

【代理の存在理由】
①私的自治の拡張、②私的自治の補充
【代理の効果】
代理人が行った行為の効果が本人に帰属する。
【代理の要件】
  1. 代理人に代理権があること(代理権の存在)
  2. 顕名(けんめい)があること顕名(けんめい)
  3. 有効な代理行為がなされたこと(有効な代理行為)

Question【ケース1-6②】

AはBに土地を購入する代理権を与え、BはAのためにCの土地を購入する契約を締結した。しかし、Cとの契約締結の際に、Bは自分がAの代理人であることを示さずに契約を締結していた。しかし、Cはこれまでの交渉過程において、BがAの代理人として行動していることを知っており、契約の当事者はAだと認識していた。この場合も顕名がないことから有効な代理とはならないのか?
制限行為能力者制度1-6②

顕名がなかった場合はどうなる?

顕名とは、代理人が本人のためにすることを示すことです。

具体的には「A代理人B」と表示して契約を締結することを指します。

なぜ顕名は有効な代理となるための要件の1つとなっているのでしょうか?

それは、顕名があることで相手方は契約の当事者が誰かを認識することができるからです。もし顕名がなければ、Bが自分のために契約を締結しているのか、本人Aのために契約を締結しているのかが、Cからみると分かりません。

したがって、顕名がない場合、原則として代理人と相手方の間で効力が生じることになります。

第100条本文
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす

「本人のためにすることを示さないでした意思表示」とは顕名がなかったことを指しています。また、「自己のためにしたものとみなす」結果、代理人と相手方の間で契約は成立することになります。

これは、代理人が代理人として行動していることを認識できない相手方を保護するための規定です。

したがって、相手方が悪意または有過失の場合は、100条ただし書きで、有効な代理と同様に扱って、本人と相手方との間で効果を生じることにしています。

<顕名の有無とその効果>
「A代理人B」と表示 顕名あり 本人Aに効果帰属(99①)
「B」と表示 顕名なし 相手方善意・無過失 代理人Bに効果帰属(100)
相手方悪意・有過失 本人Aに効果帰属(100ただし書)

【図解1-6②】顕名がない場合の効果

善意無過失⇒BC間に効果帰属、悪意有過失⇒AC間に効果帰属

ただし、このような処理になるのはあくまでも代理人が本人のために行動した場合、つまり代理意志があることが前提になります。
代理人が自分のために行動した場合には、たとえCが「BはAのために行動しているんだろう」と誤解していたとしても、「BC間の契約」として成立するだけです。

Answer【ケース1-6②】

「顕名」がありませんので、有効な代理とはならず、B・C間で契約が成立したことになりそうです。
しかし、相手方Cは、交渉の経緯から、代理人Bが本人Aのために代理人として行為をしていることを知っています。つまり、悪意です。
したがって、有効な代理と同様に扱われ、本人Aと相手方Cの間で契約は成立します。

【板書ノート1-6②】

【顕名とは】
  • 顕名とは、代理人が本人のためにすることを示すこと
    (「A代理人B」のように表示すること。)
    ⇒顕名がない場合、有効な代理とはならない。
【顕名がなかった場合の効果】
  • 相手方が善意かつ無過失の場合⇒代理人に帰属
  • 相手方が悪意または有過失の場合⇒本人に帰属
関連資格
  • 公務員
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 宅建
  • 不動産鑑定士
  • 公認会計士
  • 土地家屋調査士
  • ビジ法
  • FP
  • 中小企業診断士
  • マン管
  • 前のページに戻る
ページのトップへ戻る