教養民法基礎コース

制限行為能力者制度②

Question【ケース1-5①】

後見開始の審判を受けたA(成年被後見人)は、自己所有の土地をBに売却し、代金として1000万円を受け取った。それに気付いた後見人であるC(Aの配偶者)は、この契約を取り消して土地を取り戻すことができるか?
制限行為能力者制度1-5①

成年被後見人とは?

成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者であって、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者をいいます(7条)。

成年被後見人の保護者は、成年後見人とよばれています(8条)。

成年被後見人が行った行為の効果は?

成年被後見人の行った法律行為は、取り消すことができます(9条本文)。

ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、成年被後見人であっても行為能力が認められていますので、取り消すことができません。(9条ただし書)。

日常生活に関する行為についてまで行為能力を制限してしまうと、成年被後見人が生活するのに困難をきたすからです。

なお実際に取り消した場合に成年被後見人が返還しなければならない範囲は、現存利益に限られます。この点は未成年者と同様です。

成年被後見人はたとえ同意を得ても有効な行為はできない

成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるので、たとえ事前に成年後見人が同意を与えていたとしても単独行動させるのは危険と考えられています。それゆえ、成年被後見人は、成年後見人の同意を得ても、有効に法律行為をすることはできません

つまり、未成年者における親権者とは異なり、成年後見人に同意権はないということになります。ということは、事前に成年後見人の同意を受けた上で成年被後見人が法律行為を行ったとしても、やはり取消しは可能ということになります。

【図解1-5①】取消し

取消し A・Cは、AB間の売買契約を取り消すことができる。

成年被後見人に有利と判断すれば、成年後見人は追認をすることも可能です。

【図解1-5②】追認

追認 Cは、AB間の売買契約を追認して有効に確定できる。

成年被後見人が有効に法律行為を行うためには?

では、成年被後見人が有効に法律行為を行うための方法としてはどのようなものがあるでしょうか?

事前に同意を得て行う方法は、成年後見人に同意権がないため有効なものとなりません。したがって、法定代理人である成年後見人に、全ての法律行為(日常生活に関する行為を除く)について代理人として代わって行ってもらうしかありません。

【図解1-5③】成年被後見人が有効に法律行為を行う方法

成年被後見人が有効に法律行為を行う方法

成年後見人には、①取消権、②追認権、③代理権が認められるが、同意権は認められていない。

Answer【ケース1-5①】

土地の売買契約は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」に該当しませんので、取消しの対象となります。したがって、それに気付いた後見人であるCは、この契約を取り消して土地を取り戻すことができることになります。

【板書ノート1-5①】

【成年被後見人の場合】
  • 成年被後見人が行った行為は、原則として取消しの対象となる。

    ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は単独で有効に行為することができるので、取消しはできない。
  • 成年後見人には同意権がないので、同意を受けた上で行った行為でも取消しができる。

Question【ケース1-5②】

保佐開始の審判を受けたA(被保佐人)は、保佐人であるC(Aの息子)の同意を受けずに、Bとの間で金銭消費貸借契約を締結し、高利で100万円を借りた。それに気付いたCは、この契約を取り消すことができるか?
制限行為能力者制度1-5②

被保佐人とは?

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者であって、家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者をいいます(11条)。

被保佐人の保護者は、保佐人と呼ばれます(12条)。

被保佐人が行為能力を制限されている行為は?

被保佐人は民法13条1項に列挙されている行為について行為能力の制限を受けています。

<民法13条1項列挙の行為>

元本を領収し、又は利用すること。
借財又は保証をすること。
不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④訴訟行為をすること。
贈与、和解又は仲裁合意をすること。
相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

これらに加えて、保佐人の同意を得なければならない旨の審判を受けた行為について行為能力を制限できます。つまり、13条1項に列挙されている行為に追加が可能ということです。

13条1項に列挙されている行為を保佐人の同意を受けずに行った場合、取消しが可能です(追認もできます)。

もちろん事前に保佐人の同意を受ければ、被保佐人は有効に行為を行うことができます。

一方、保佐人は法定代理人ではないので当然には代理権を有していません。代理行為をするためには、家庭裁判所による代理権付与の審判を受ける必要があります。

【図解1-5②】取消し・追認

取消し・追認

被補助人の場合は?

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者であって、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者をいいます(15条1項)。被補助人の保護者は、補助人と呼ばれます(12条)。

被補助人が行為能力の制限を受けるのは、民法13条1項列挙の行為の中で、補助人の同意を得なければならない旨の審判を受けた行為です。

つまり、被補助人は被保佐人を少し小さくした類型ということになるでしょう。

Answer【ケース1-5②】

保佐人Cは、被保佐人AがBとの間で締結した金銭消費貸借契約を取り消すことができます。

【板書ノート1-5②】

【被保佐人の場合】
  • 被保佐人が行為能力の制限を受けるのは、民法13条1項に列挙されている行為。
    たとえば、借金をする・保証人になる・不動産を売買する・相続の承認等をする行為

    13条1項に列挙されている上記のような行為を保佐人の同意を得ることなく行った場合、取消しの対象となる。
【被補助人】
  • 行為能力の制限を受けるのは、民法13条1項に列挙されている行為の一部。
  • 制限されている行為の範囲が狭い以外は被保佐人ほぼ同じ処理になる。
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