教養民法基礎コース

制限行為能力者制度①

Question【ケース1-4】

高校生A(17歳)は、自分の自転車をBに売却し代金として5万円を受け取ったが、この契約の締結について親権者Cの同意を受けてはいなかった。それに気付いたCは、この契約を取り消して自転車を取り戻すことができるか?
制限行為能力者制度1-4

制限行為能力者制度とは何か?

法律行為(契約等)を有効に行うためには、「行為能力」が必要です。

「行為能力」とは、単独で完全に契約のような法律行為をなし得る能力のことです。

子供や精神的な病気の方が判断能力の欠けた状態もしくは判断能力が弱い状態で契約を締結してしまった場合、不利益を受ける可能性があります。判断能力の欠ける者や不十分な人を保護するために、民法では、行為能力が欠ける、もしくは弱いと考えられる人を「制限行為能力者」として類型化しています。

制限行為能力者の行った行為は取り消すことができる

制限行為能力者が行った行為は取り消すことができます。

意思無能力者が行った行為は無効として処理されることとしっかり区別しておきましょう。

<意思能力と行為能力の比較>
意思能力 行為能力
行為の結果を弁識するに足りるだけの精神能力 定義 単独で、完全に(有効に)、契約のような法律行為をなし得る能力
意思無能力者 欠ける者 制限行為能力者
無効 行為の効果 取消し得る

どのような者が制限行為能力者か?

民法では、①未成年者、②成年被後見人、③被保佐人、④被補助人を「制限行為能力者」と定めています。

①は年齢によって決まるものですが、②~④は精神的な病気の人が類型化されてものです。②~④の中では、②成年被後見人が最も症状が重篤な類型です。被保佐人、被補助人と順に軽い症状の人を想定した類型になっていきます。

②~④の精神的な病気を原因とした類型は、共通で家庭裁判所の審判が必要とされています。

<制限行為能力者の4類型>
類型 未成年者 成年被後見人 被保佐人 被補助人
対象 20歳未満の者 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者
手続 特になし 家庭裁判所の審判 家庭裁判所の審判 家庭裁判所の審判
保護者 親権者(未成年後見人) 成年後見人 保佐人 成年後見人

どのような行為について行為能力の制限を受けるか(=単独で有効に行為できないか)は、制限行為能力者の類型ごとに異なっています。

各類型ごとに行為能力の制限を受けている行為および処理の仕方について①~④の順に見ていきましょう。

未成年者とは?

未成年者とは20歳未満の者をいいます(4条)。これについては説明の必要はありませんね。ただし、未成年者でも、婚姻をすると成年に達したものとみなされて、制限行為能力者ではなくなります。これを成年擬制といいます。

未成年者を保護する者は、一次的には親権者ですが、親権者がいないときは未成年後見人となります。

未成年者が単独で有効にできる行為は?

未成年者は制限行為能力者とされていますが、単独に有効にできる行為、つまり行為能力を制限されていない行為もあります。

以下の3つの行為(①②③)については例外的に未成年者も行為能力が認められていますので、単独で有効な行為を行うことが可能です。

<未成年者が行為能力の制限を受けていない行為>

単に権利を得・義務を免れる法律行為(5条1項ただし書)
 (例:負担のない贈与を受ける行為、債務を免除してもらう行為)
②処分を許された財産の処分(5条3項)
 (例:お小遣いによる買い物、塾の月謝として渡されたお金を支払う行為)
③許可された営業に関する行為(6条1項)
 (例:親権者から商売をすることを許可された未成年者がその営業に関して行う売買契約)

①は未成年者にとって不利益を生じさせることのない行為、②③は実質的にみて親権者からその法律行為について同意があるとみなしてよいケースということになります。

これらは単独で有効に行為できるとされています。

未成年者が同意を受けずに行った行為はどうなる?

この①~③に該当しない行為を未成年者が行うためには、親権者(もしくは未成年後見人)の同意を受ける必要があります。親権者の同意を受けずに行った行為は取り消すことができます。

第5条1項本文
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
第5条2項
前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる

本条における「法定代理人」とは、親権者と未成年後見人の両者を指します。

取消しは、法定代理人(親権者・未成年後見人)だけでなく、未成年者自身も単独ですることができます。

取り消すと初めから無効であったものとみなされる(121条本文)ので、両当事者には受け取った金品の返還義務(原状回復義務)が発生します。

第121条
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

この「現に利益を受けている限度」(=現存利益)とは、受けた利益のうち、現在もなお存続しているものをいいます。つまり、手元に残ったものを返せばいいということですが、判例上、生活費や借金の返済に充てた場合には現存利益はあるが、ギャンブルや遊興に浪費してしまった場合には現存利益はないとされています。

したがって、生活費や借金返済に充てた場合には補填して返却する必要があることになります。

【図解1-4①】取消し

取消し A・Cは、AB間の売買契約を取り消すことができる。

未成年者側に取り消す義務があるわけではありません。自分達に有利だと思ったら取消しをしなければ契約は有効なものとして存続しますし、有効な行為として確定したいと思った場合には、追認という行為を行えば、有効な契約として確定します。

追認」というのは、事後承認のようなものです。

【図解1-4②】追認

追認 Cは、AB間の売買契約を追認して有効に確定できる。

未成年者が有効に法律行為を行うためには?

では、未成年者が有効に法律行為を行うための方法としてはどのようなものがあるでしょうか?

①事前に親権者の同意を得て行う方法と②法定代理人(親権者・未成年後見人)に代理人として代わって行ってもらう方法があります。

【図解1-4③】未成年者が有効に法律行為を行う方法

未成年者が有効に法律行為を行う方法

法定代理人(親権者・未成年後見人)には、①取消権、②追認権、③同意権、④代理権が認められる。

Answer【ケース1-4】

Aは17歳の高校生ですから未成年者です。そして、自転車の売買は未成年者が単独で有効に行える行為ではありません。したがって、親権者の同意が必要となります。

しかし、同意を得ていませんので、未成年者である本人Aとその法定代理人である親権者Cは、この契約を取り消すことできることになります。

取消しをすることによって、C(およびA)はBから自転車を取り戻すことができますが、Aも受け取った代金を返す必要があります。現存利益の返還でいいので、もし浪費して手元に2万円しか残っていなかった場合には、その2万円をBに返せばいいということになります。

【板書ノート1-4】

【制限行為能力者制度の概要】
  • 制限行為能力者は4種類
    ⇒①未成年者、②成年被後見人、③被保佐人、④被補助人
  • 制限行為能力者が行った行為は取消しができる。
【未成年者の場合】
  • 原則として親権者の同意がなければ有効に法律行為を行うことができない。
    ⇒親権者の同意がない場合、取消しが可能(追認も可能)
  • 法定代理人(親権者・未成年被後見人)には、①取消権、②追認権、③同意権、④代理権が認められている。
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